成人した子の紛争、親に当然の交渉権限はない
まず、前提として知っておきたい大切なことがあります。もしトラブルの相手が18歳以上の成人であれば、その親御さんは原則として、紛争の当事者ではないということです。つまり、親であるというだけで、当然に交渉したり、合意したりする法律上の権限(代理権)があるわけではないのです。代理権は、本人から明確に与えられて初めて生じるものなのですね。私個人としては、やはり大人の問題は大人が解決するのが筋だと感じてしまいます。
また、「息子(娘)が傷ついたから、親として慰謝料を請求したい」というお気持ちも理解できますが、親御さん自身が慰謝料を請求できるケースも、非常に限られているのが実情です。生命を侵害された場合などの例外を除き、交際関係のもつれにおいて親御さん自身が慰謝料を請求できる場面は少ないと言えるでしょう。
ただし、親御さんが無報酬で子のために話を進めること自体は、直ちに違法というわけではありません。この点は誤解のないように理解しておくことが大切です。
親が正面の相手方となる例外的な場面
一方で、親御さんが紛争の当事者や法定代理人として、直接の相手方となるケースも存在します。どのような場合が当てはまるのでしょうか。
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相手が18歳未満の未成年者である場合: 親権者は、未成年者の財産に関する法律行為において、その子を代表する権限を持っています。未成年者とのトラブルでは、親権者が交渉相手となる可能性が高いです。
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本人から委任を受けている場合: 委任状や本人からの明確な連絡があり、親御さんが窓口として出てきているのであれば、対応が必要になるでしょう。
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親自身が貸主・立替払いをしている場合: 親御さんが直接お金を貸していたり、費用を立て替えていたりする部分については、親御さんが債権者として請求する立場になり得ます。
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弁護士が代理人に就いた場合: これは親御さんからの連絡ではなく、専門家である弁護士からの連絡ですので、当然応答すべき相手です。
その場で応じない方がよい4つの理由
突然の連絡に対して、その場で内容のある返答をすることは、避けた方が賢明だと考えられます。その理由を4つ挙げてみましょう。
- 本人の意思と一致していないことがある: 本人が知らないところで親御さんが動いている場合、そこで何かを決定しても、根本的な解決にはつながりにくいでしょう。
- 事実関係が伝聞である: 親御さんは、当事者から聞いた話を前提にしているため、事実認識に食い違いが生じることがあります。これでは議論が噛み合いません。
- 発言が記録として残る: 電話であっても録音されている可能性があり、その場しのぎの謝罪や安易な「払います」といった発言が、後々事実を認めた証拠として扱われるリスクがあります。これは非常に注意したい点ですね。
- 解決が遠回りになる: 最終的な解決には本人の関与が不可欠です。当事者ではない方との協議は、問題解決をかえって複雑にしてしまうことがあるのです。
「無視する」と「応じない」は違う
では、どうすれば良いのでしょうか。着信を拒否して一切連絡を取らない「無視」が最善策かというと、必ずしもそうとは限りません。連絡がエスカレートしたり、家族や職場にまで矛先が向かったりするリスクも考えられます。
現実的な対応としては、「内容のある交渉には応じないが、連絡の位置づけだけは確認する」という姿勢が推奨されます。具体的には、次の3点だけを確認に留めましょう。
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誰が: 連絡してきた方の氏名と、本人との関係
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何を根拠に: どの事実について、どのような請求なのか
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何を求めているのか: 金銭なのか、謝罪なのか、話し合いなのか
その上で、「ご本人から直接ご連絡ください」や「以後は書面でお願いします」と伝え、電話でのやり取りから、メールや手紙など、記録が残る形に切り替えるのが良いでしょう。相手の自宅へ出向いたり、複数人に囲まれた状況で話したりすることは、冷静な判断を難しくするため、避けるべきだと私は思います。
一線を越えた連絡には別の対応が必要
親御さんからの連絡が、単なる要求から、圧力へと変化する可能性も残念ながら考えられます。次のような行為は犯罪に該当する可能性があるため、注意が必要です。
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危害を加える旨を告げる:脅迫罪
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脅して義務のないことをさせる:強要罪
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脅して金銭を交付させる:恐喝罪
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自宅や実家に上がり込む、退去を求めても帰らない:住居侵入罪・不退去罪
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勤務先に押しかけて業務を妨げる:偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪
たとえ請求そのものに理由があったとしても、その手段が行き過ぎれば違法と評価されることがあります。「親として当然の要求だ」という言い分も、やり方によっては成り立たなくなることがあるのですね。もし身の危険を感じるような言動があった場合は、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署への相談も選択肢として検討してください。
避けたい5つの対応
焦りや感情的な状態から、つい誤った対応をしてしまうこともあります。特に避けたい対応を5つご紹介します。
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その場で事実を認める、反射的に謝ってしまう
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言われた金額をその場で約束する、支払ってしまう
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内容を十分に確認しないまま念書や示談書に署名・押印する
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感情的に言い返す、経緯をSNSで公表する(名誉毀損など別の問題が生じ得ます)
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LINEやメールの履歴を削除する(自分に有利な事情まで失われる可能性があります)
冷静さを保つことが、何よりも大切だと私は思います。
応じる場合は「誰と合意するのか」を間違えない
話し合いに応じて解決を図るという選択肢も当然あります。その際に特に重要なのが、「誰と合意するのか」を間違えないことです。
相手が成人である場合、紛争の相手方はあくまで本人です。親御さんとの間で示談書を交わしても、本人との間の請求が処理されたことにはならず、後日あらためて本人から請求を受けるおそれがあります。書面を作成する際は、当事者を正確に特定し、清算条項や接触禁止に関する条項を含めるかどうかも慎重に検討しましょう。もし相手が未成年であれば、親権者との合意が意味を持ちますので、この点は状況によって対応が変わってきます。
窓口を一本化するという方法
「連絡が止まらない」「家族や勤務先に接触されそうだ」といった状況に陥りそうな場合は、弁護士を窓口にするという方法も有効です。弁護士が代理人に就いたことを相手方に通知し、以後の連絡先を弁護士に一本化することで、当事者間の直接のやり取りを避けることができます。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、こうした男女間のトラブルに関する相談が継続的に寄せられており、依頼を受けた弁護士が相手方の親族に対し、代理人に就いたことや、今後の対応を引き取ること、依頼者本人や家族への連絡を控えてほしいことを伝えたところ、連絡が止み、家族への接触も生じなかった事例も紹介されています。もし私が同じ立場だったら、やはり専門家の力を借りることを考えるでしょう。
まとめ
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相手が成人であれば、その親は原則として紛争の当事者ではなく、当然の交渉権限を持つわけではない
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相手が未成年である、本人の委任がある、親自身が貸主である、といった場合は例外
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その場で認めない・約束しない・署名しないことが基本
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電話から記録の残る形に切り替え、誰が・何を根拠に・何を求めているかだけを確認する
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危害を告げる、押しかけるといった行為は犯罪に当たり得る
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話し合いに応じるなら、誰との間で合意するのかを間違えない
感情的になりがちな状況だからこそ、冷静な対応が求められます。もし連絡の位置づけが分からなかったり、対応を誤りたくなかったりする段階で、早めに弁護士に相談しておくことが、結果として穏便な解決につながることが多いのではないでしょうか。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱っており、「家族や勤務先に影響が及ばないように」最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応しているそうです。全国どこからでも利用できる無料相談を、メール・電話・LINEで24時間受け付けています。
問い合わせ先:
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LINE:@wakailaw
皆さん、いかがでしたでしょうか。予期せぬトラブルに巻き込まれた時こそ、冷静に、そして適切な知識を持って対応することが、ご自身の平穏な生活を守る上で非常に重要です。今回の内容が、皆さんの参考になれば幸いです。それでは、またお会いしましょう。賢作でした。


