「結婚するって言ったよね」が婚約になるか?
「結婚しよう」と約束したからといって、それが直ちに法律上の「婚約」となるわけではない、と聞くと、少し意外に感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。婚約は、将来結婚することを内容とする当事者間の合意であり、法的には契約の一種と考えられています。しかし、結婚(婚姻)とは異なり、役所への届け出は必要ありませんし、成立の要件を定めた明確な条文もありません。
では、どのような場合に婚約が成立したと言えるのでしょうか。これは、これまでの裁判例の積み重ねによって判断されてきました。大切なのは、当事者双方が心から将来夫婦になろうという真摯な意思を持っていたことです。片方が「結婚するつもりだった」と感じていても、相手の意思が伴っていなければ、婚約とは評価されにくい傾向があります。
婚約成立の「本当の基準」は外から見える出来事
理論上は二人の合意だけで婚約は成立するとされていますが、人の心の中は外からは見えませんよね。そのため、実務では、結婚に向けた客観的な出来事があったかどうかが非常に重視されるのです。

例えば、次のような具体的な行動は、婚約が成立していることの裏付けとなり得る事情として挙げられます。
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婚約指輪や結婚指輪の購入、または受け渡し
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結納や、両家の顔合わせ、食事会
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双方の親族への挨拶
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入籍日や結婚式の日取りを決めること
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式場の下見や予約、招待状の準備
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新居探しや同居の準備
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職場や友人への結婚報告
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婚姻届への署名
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関係が長期にわたり、妊娠に至ったこと
これらの出来事は、どれか一つがあれば自動的に婚約が認められるというものではなく、また、すべてが揃わなければならないというものでもありません。二人の合意の内容や、これまでの交際の経過と合わせて、総合的に判断されることになります。婚約指輪や両家顔合わせといった具体的な行動は、やはり二人の真剣な気持ちを目に見える形にする大切なステップだと感じますね。
認識がすれ違いやすい場面
「言った・言わない」や「どういうつもりだったか」で認識がすれ違うことは、人間関係においてよくあることかもしれません。しかし、結婚に関する約束となると、その影響は計り知れません。特に次のような場面では、お互いの認識に大きなズレが生じやすいと言われています。
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将来の希望を語り合っただけの場合: 「結婚したいね」といった会話は、具体的な段取りが伴っていなければ、単なる希望の共有と評価されることがあります。
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プロポーズへの返事があいまいだった場合: その場では断りにくく、はっきりしない返事をしてしまうケースです。申し込んだ側は承諾と受け止め、受けた側は保留のつもりでいるため、大きな認識のズレが生じます。
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同棲や長い交際が続いていた場合: 同居は婚約を裏付ける事情の一つにはなりえますが、それだけで婚約が成立するわけではありません。生活費の分担や新居の準備といった経緯があるかどうかも見られます。
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妊娠した場合: 妊娠それ自体が婚約を意味するわけではありませんが、関係の長期化や妊娠は、婚約成立を認める方向に働く事情の一つとして考慮されることがあります。なお、生まれた子の認知や養育費は、婚約の有無とは別の問題です。
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結婚相談所やマッチングサービスの「成婚」: サービス上の区切りであり、それだけで直ちに法的な婚約と同じ意味を持つわけではありません。ただし、成婚を機に両家の顔合わせや式場の予約へ進んでいれば、婚約を裏付ける事情になりえます。
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親への挨拶をした場合: 挨拶の趣旨によります。結婚の申し入れとして行われたのか、単に交際相手の紹介にとどまるのかで、評価は変わります。
もし「婚約していた」と主張されたら
もし、相手から婚約破棄を理由に慰謝料を求められたとしても、請求されたこと自体が直ちに支払義務を意味するわけではありません。このような場合、争点となるのは、おおむね次の三つです。
- 結婚する旨の合意そのものがあったか
- その合意が真摯なものだったと言えるか
- 合意を裏付ける客観的な出来事があるか
これに加えて、仮に婚約が成立していたとしても、破棄にやむを得ない事情(正当な理由)があったかどうか、そして請求できる期間を過ぎていないかも問題になります。
このような状況で避けたいのは、次のような対応です。
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早く話を終わらせたい一心で、あいまいに認めてしまうこと。一度認めた事実は、後から覆すことが難しくなるかもしれません。
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その場で金額に応じ、支払ってしまうこと。一度任意に支払った金銭を後から取り戻すのは容易ではありません。
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メッセージのやり取りを消してしまうこと。自分に有利な経緯まで一緒に失われる可能性があります。
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一切連絡を絶ってしまうこと。話し合いの機会がないまま、法的手続きに進まれることがあります。
まずは、交際の経過と結婚に関するやり取りを時系列で整理し、記録を残したうえで、相手の請求内容(誰が、何を根拠に、いくらを求めているのか)を確認することが大切です。もし、ご自身の身にこのような状況が起こってしまったら、一人で抱え込まずに、まずは状況を整理し、専門家の意見を聞くことが賢明だと、私は思います。
婚約が成立していなくても問題が残る場合
婚約が認められない場合でも、事情によっては別の形で責任が問われることがあります。
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既婚であることを隠されていた、独身だと偽られていたといった場合には、貞操権の侵害を理由とする賠償が認められることがあります。
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結婚を口実に金銭を交付させていた場合には、結婚詐欺が問題になりえます。ただし、当初からだます意図があったことの立証は容易ではありません。
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妊娠している場合の認知や養育費は、婚約や婚姻の有無とは関係なく検討されます。
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式場のキャンセル料や新居の費用など、実際に支出した費算は、慰謝料とは別の枠組みで議論されることがあります。
なお、請求する側にも限度があります。職場や親族に知らせると迫るなど、要求の仕方が社会通念上の範囲を超えると、それ自体が別の問題になりえることも覚えておきたいですね。
すれ違いを防ぐために
婚約をめぐる争いの多くは、「言った・言わない」と「どういうつもりだったか」に集約されると、専門家は指摘します。これから結婚を考える段階であれば、次の点を意識しておくと、後の食い違いを減らせるかもしれません。
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結婚の意思を確認するときは、時期や段取りといった具体的な話までしておくこと。
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返事をあいまいにしないこと。保留したいときは、保留であることを言葉にして伝えること。
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決めたことは、メッセージなど記録の残る形にしておくこと。
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双方の家族や周囲に伝えておくこと。
また、婚約破棄を理由とする損害賠償の請求権には期間の制限があり、原則として損害および相手方を知った時から3年で時効にかかると考えられています。時間が経つほど記録も記憶も失われますので、対応を先送りしないことが大切です。
まとめ
婚約は、届け出も儀式も要らない一方で、片方が「婚約したつもり」でいるだけでは成立しません。求められるのは、双方の真摯な合意と、それを外から確認できる出来事の積み重ねです。自分が婚約していたと考えている場合も、相手から婚約破棄を主張されている場合も、まずは交際の経過を客観的な事実として整理してみることが、見通しを立てる第一歩になります。判断に迷う場面では、早い段階で弁護士に相談し、手持ちの事情でどこまで主張できるのかを確認しておくのが良いでしょう。
監修者情報
この記事は、弁護士法人若井綜合法律事務所 代表弁護士の若井 亮氏に監修いただきました。若井弁護士は、男女問題・男女トラブルに強く、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とされています。
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弁護士法人若井綜合法律事務所は、男女間のトラブルを数多く取り扱っており、家族や勤務先に影響が及ばないよう最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応されています。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあるとのことです。
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