まずは「何に払ったお金か」を切り分けることが大切
返金の可否を考える前に、支払いを次の3つに分けて整理することが出発点になります。
- 店に支払った飲食代・指名料・ボトル代など:これらは店(事業者)との契約に基づく支払いと考えられます。
- キャスト個人に渡した現金・プレゼント:これらは個人間の贈与にあたると見なされることが多いようです。
- まだ払っていないツケ(売掛金):これは「返してもらう」というよりも「支払義務があるか」という問題になります。
この切り分けは、問題を整理する上で非常に大切だと感じますね。感情的になりがちな状況だからこそ、冷静な視点が必要です。
原則として、好意を示す接客は直ちに違法ではない
接客業において、お客様に好意的な言葉をかけたり、親密な雰囲気をつくったりする行為は、それ自体が直ちに違法とされているわけではありません。飲食や接客というサービスが実際に提供されているからです。
そのため、「好きだと言われた」「二人きりで会う約束をした」といった事情があったとしても、それだけで契約が無効になったり、支払ったお金が不当利得になったりするとは考えにくいのが実情です。返金を求めるには、通常の営業の範囲を超えた具体的な事情を示す必要があるようです。どこまでが営業で、どこからが個人の感情なのか。この線引きは本当に難しいですよね。
返還を求める余地がある4つの法律構成
では、どのような場合に返還を求める余地があるのでしょうか。弁護士によると、主に以下の4つの法律構成が考えられるそうです。
1. 消費者契約法の「デート商法」に関する規定
事業者が、お客様が恋愛感情などの好意を抱き、かつ相手も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、これに乗じて「契約しなければ関係が破綻する」旨を告げ、それによってお客様が困惑して契約した場合に、契約の取消しが認められる可能性があります(消費者契約法4条3項6号)。
取消しが認められれば、支払った代金は返還の対象になります。ただし、この規定には「社会生活上の経験が乏しいことから」という要件があり、一定の社会経験を重ねた成人については、適用のハードルが高くなる傾向があるとのことです。また、取消権は追認できる時から1年、契約時から5年で消滅します。
2. 詐欺による取消し(民法96条1項)
交際する意思がないのに「付き合っている」と信じ込ませ、それを手段として支払わせたといえる場合には、詐欺を理由に意思表示を取り消し、不当利得の返還を求める余地があるかもしれません。もっとも、当初から欺く意図があったことの立証は容易ではないのが現実です。
3. 不法行為に基づく損害賠償(民法709条)
営業として社会的に許容される限度を明らかに超え、お客様の判断を著しくゆがめて出捐(しゅつえん:金銭などを支出すること)させたと評価できる場合には、不法行為として損害賠償を請求する構成も考えられます。店の関与の程度によって、店またはキャストのいずれに請求するかが変わるでしょう。
4. 公序良俗違反(民法90条)
売春を前提とする約束など、契約内容そのものが公序良俗に反する場合は無効となり得ます。しかし、無効の効果は双方向に働き、既に渡したお金の返還が制限されることもあります(不法原因給付・民法708条)。この構成は必ずしもお客様側に有利とは限りません。
法律の条文を見ると、一見複雑に見えますが、それぞれのケースで適用される可能性のある法律があることが分かります。しかし、やはり証拠が鍵になるのですね。
キャスト個人へのプレゼント・現金について
これらは贈与にあたるのが通常です。書面によらない贈与でも、引き渡しが終わった部分については解除できません(民法549条・550条ただし書)。「気持ちとして渡したもの」は、原則として返還を求めにくいと考えられます。
2025年施行の改正風営法で何が変わったか
悪質なホストクラブ問題を受け、2025年5月28日に公布された改正風営法(令和7年法律第45号)が同年6月28日から施行されました。主な内容は次のとおりです。
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接待飲食営業を営む風俗営業者の遵守事項の追加(18条の3):料金についての虚偽・誤認を招く説明の禁止、お客様が恋愛感情などを抱き相手も同様と誤信していることに乗じ、「飲食しなければ関係が破綻する」「自分が降格・配置転換などの不利益を受ける」と告げて困惑させ飲食などをさせる行為の禁止、注文前の提供によって困惑させる行為の禁止などが盛り込まれました。
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禁止行為の新設(22条の2):料金の支払いをさせる目的で、お客様を威迫して困惑させる行為や、威迫・誘惑して売春や性風俗店勤務などによる資金調達を要求する行為が禁止されました。違反には6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科せられます。
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無許可営業などの罰則強化:個人は5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金へと強化されました。
ここで押さえておきたいのは、風営法は行政上の取締法規であり、違反があったからといって、お客様に自動的に返金請求権が生じるわけではないという点です。ただし、違反にあたる働きかけがあった事実は、民事上の交渉や請求において意味を持ち得るでしょう。法律が変わったからといって、すぐに解決するわけではないのですね。しかし、違反行為があったという事実は、民事上の交渉においては大きな意味を持つことでしょう。
また、18条の3は接待飲食営業を営む風俗営業者を、22条の2は接待飲食営業を営む者を対象としています。接待を行っていない業態はそもそも対象外である一方、届出のみで実態として接待をしていれば、無許可営業という別の問題が生じる可能性があります。
それでも返金が難しいとされる理由
法律構成があるとはいえ、実際に返金が難しいとされる理由もいくつか存在します。
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証拠の問題:やり取りが残っていない、削除されているケースが多いのが実情です。「関係が破綻する」といった具体的な言葉があったかどうかが要になります。
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やり取りが双方向であること:お客様側からも好意を示していた場合、一方的に感情を利用されたと評価しにくくなることがあります。
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要件のハードル:消費者契約法の規定は要件が細かく、通常の営業トークとの線引きが問題になります。
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費用倒れ:支払額に対して回収見込みが小さいと、手続きの負担が上回ることがあります。
感情的なやり取りが多い中で、具体的な証拠を残すのは至難の業かもしれません。この点が、返金請求の大きな壁となるのでしょうね。
求め方を誤ると、立場が入れ替わることがある
返金を求める行為そのものが、次のように評価されるおそれがあるため、注意が必要です。
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店に居座って要求を続ける行為は、不退去罪や威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
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「警察に言う」「ネットに晒す」と告げて支払わせようとすると、脅迫罪や恐喝罪にあたるかもしれません。
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SNSに店名やキャスト名を挙げて投稿することは、名誉毀損や民事上の損害賠償請求につながる可能性があります。
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退店後もキャストへの連絡を続ける場合、相手が拒んでいると、ストーカー規制法上の問題となる可能性も考えられます。
正当な請求であっても、感情的になって手段を誤ってしまうと、かえってご自身が不利な立場になりかねません。これは非常に恐ろしいことです。
返金を検討するときの進め方
もし返金を検討されるのであれば、以下の進め方を参考にされてはいかがでしょうか。
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記録を保全する:DM、LINE、レシート、カード明細、来店日などを、消さずに日付順で残しておくことが大切です。
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支払いを整理する:店への支払いか、キャスト個人への贈与かを分けて金額を明確にします。
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言われた言葉を特定する:誰が、いつ、どのような文言で支払いを促したかを具体的に書き出してみましょう。
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窓口を一本化する:直接交渉を続けず、書面でのやり取りに切り替えることも有効です。
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相談先を使う:一人で抱え込まず、専門機関や弁護士に相談することを検討してみてください。
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消費者ホットライン:188
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警察相談専用電話:#9110
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弁護士
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まずは冷静に、状況を整理することから始めるのが良いでしょう。そして、専門家の力を借りることも視野に入れるべきだと考えます。
逆に「ツケを払え」と請求されている場合
売掛金の請求を受けている場合は、返金とは別の枠組みで、支払義務の有無、金額の妥当性、取り立ての適法性を検討することになります。改正風営法により、支払わせる目的での威迫や、売春などによる資金調達の要求は明確に禁止されました。取り立ての態様に問題があるときは、記録を残したうえで早めに相談することをおすすめします。
まとめ
「色恋営業だった」という理由だけで返金が認められるケースは多くないのが現状です。検討の出発点としては、店への支払いとキャスト個人への贈与を分けることが重要となります。消費者契約法の取消し、詐欺取消し、不法行為などの構成があり得ますが、いずれも要件と証拠が鍵になります。2025年施行の改正風営法は規制を強めましたが、これは行政上の規制であり、直ちに返金請求権を生むものではない点に注意が必要です。そして、求め方を誤ると、ご自身が責任を問われる側になり得ることを忘れてはなりません。
弁護士法人若井綜合法律事務所には、「恋愛感情を利用された」「営業だとは思わなかった」という相談が継続的に寄せられているそうです。特に2025年の改正風営法施行後は、「法律が変わったので返金できますか」という問い合わせも増えているとのことですが、実際には風営法違反と民事上の返金請求は別問題であり、誤解している方が少なくないようです。
記事監修者
若井 亮(わかい りょう)
弁護士法人若井綜合法律事務所 代表弁護士(東京弁護士会所属)
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意としています。
問い合わせ先
弁護士法人若井綜合法律事務所では、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱っており(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上)、家族や勤務先に影響が及ばないよう、内密かつ穏便な解決を最優先に対応しているとのことです。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあるそうです。
全国どこからでも利用できる無料相談を、メール・電話・LINEで24時間受け付けています。まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が、解決へとつながります。
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LINE: @wakailaw
色恋営業をめぐる問題は、法律の知識だけでなく、冷静な判断と適切な行動が求められる非常にデリケートな問題だと改めて感じました。もし、このような問題でお悩みの方がいらっしゃいましたら、一人で抱え込まず、ぜひ専門家の方にご相談されてみてはいかがでしょうか。無料相談も利用できるようですので、一歩踏み出す勇気が、解決への道を開くかもしれません。皆さんの心からの平穏を願っています。賢作でした。


